正月号 | 宗教法人 龍性院 | 埼玉県比企郡吉見町にある”真言宗智山派岩室山龍性院”のオフィシャルホームページ

正月号
  • 正月号2024.01.06

    新年おめでとうございます。ついこの間、お会いする方々に年始のご挨拶をした様な気が致しますが、あっという間に一年が経ちます。龍性院檀信徒の皆様方におかれましては、令和6年の新しい年をご家族ご一同様でご無事にお迎えのことと、心よりお慶び申し上げます。また、旧年中に賜りましたご厚情に対しまして、心よりお礼を申し上げます。本年も、當山護持・発展の為一生懸命尽力して参りますので、変わらぬご信援を頂きます様、よろしくお願い致します。

    “温暖化”という言葉が使われる様になって久しいですが、令和5年の夏も格別に暑い夏でした。また、従来の所謂「夏」と言われた時期のみが暑いわけではなく、9月後半や10月を迎えても最高気温が30度を超える日も多く、11月の前半を迎えても尚、25度を上回る日がある等、一昔前の日本の四季とは様変わりしてしまった様な気も致します。「春」、「秋」と言われた過ごしやすい季節が短くなり、暑いか寒いかの極端な気候が増えてきたと感じます。

    こうした異常な気候のせいか、この夏は森林や植木等の立ち枯れの被害も多く目に致しました。私たち人間は、暑かったら涼しい場所へ移動することも可能かもしれませんが、植物はそうもいきません。あまりに過酷な条件では、忍耐強い木々でさえ生き延びるのは難しいのでしょう。

    この“龍性院だより”は、檀信徒の皆様には、紙に印刷をしてお届けしております。ベトナム出身の僧侶であるティク・ナット・ハン師は、著書において次の様に述べています。

    「もしもあなたが詩人なら、この紙の上に雲が浮かんでいるのが、はっきり見えることでしょう。雲がなければ雨は降りません。雨が降らなければ、木は育ちません。そして、木がなければ紙は出来ないのですから、この紙がこうしてここにあるために、雲はなくてはならないものです。もしここに雲がなかったら、ここにこの紙は存在しません。それで、雲と紙はインタービーイング(相互共存)しているといえるのです。」

    私たちも含めたすべてのものは、相互共存しています。つまり、自分だけの単独での存在はあり得ないのです。木が一本枯れるという事も、私にとって他人事ではないし、むしろ、他人事などあり得ず、すべての事は自分事です。たった一枚の紙が目の前に存在することは、その為に必要な他のすべてが存在するからです。

    世界的な気候変動や、他国での戦争や紛争、様々な問題に皆で目を向け、自分の為にもすべてのものと相互共存していることを再自覚する、そんな一年にしたいものです。

    令和6年が、檀信徒皆様にとって幸多き年となります様、ご祈念申し上げ、ご挨拶と致します。

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  • 正月号2023.01.01

    新年おめでとうございます。気づけば、令和を迎え早5年目を数えます。龍性院檀信徒の皆様方におかれましては、令和5年の新しい年をご家族ご一同様でご無事にお迎えのことと、心よりお慶び申し上げます。また、旧年中に賜りましたご厚情に対しまして、心よりお礼を申し上げます。本年も、當山護持・発展の為一生懸命尽力して参りますので、ご信援を頂きます様、よろしくお願い致します。

    「光陰矢の如し」と言いますが、最近は歳を重ねるごとに、この言葉の持つ意味を噛締める、そんな正月を毎年迎えております。「歳月人を待たず」という言葉もございますが、時間というものは本当に人間の都合とは関係なく、あっという間に過ぎ去っていきます。楽しくても悲しくても、あっという間に過ぎ去ります。だからこそ、“今”という時間を無駄にせず、努めて生きていくことが大切なのです。

    先日、年に数度会う程度の知り合いと会食し、別れ際に『来年もどうぞお変わりなく。』と挨拶を致しました。するとその方は、「いや、来年は今年よりもっと良い一年に変える。」と返答されました。何気なく良かれと思って掛けた挨拶でしたが、その返答に“なるほどな!”と感じ帰路につきました。

    良く考えれば、この世の万物は常に変化していくものです。綺麗に色付いた紅葉も、冬の訪れと共に落葉し、やがて春を迎えれば新たな葉や花を実らせます。日本には四季があり、私たちは季節ごとに変化する自然を目の当たりにし、変わってしまうからこそ、そこに尊さや有難さを感じることが出来るのだと思います。

    中国の無門禅師の詩に、《春に百花あり、秋に月あり、夏に涼風あり、冬に雪あり。若し閑事(かんじ)の心頭に挂(かか)る無くんば、便ち是れ人間の好時節。(無門関)》とあります。春には多くの花が咲き、秋には明月が美しく、夏は暑い中にも涼しい風が吹き、冬は深々と雪が降る。我々はつまらない事に心をかけず、ありのままに物事を見ることが出来れば、いつでも好事節なのです。

    時間は流れ、諸行は無常です。しかし、世の中は無常だからこそ美しく、無常だからこそより良い未来の為に今を大切に努力を重ねるのです。

    昨年、世界では戦争や紛争、災害等多くの災禍に見舞われました。今年は、『お変わりなく』ではなく、「お変わり下さい」と心から願います。

    令和5年が、檀信徒皆様にとって幸多き年となります様、ご祈念申し上げご挨拶と致します。

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  • 正月号2022.01.01

    早いもので、新たな元号になってから3度目のお正月となりました。龍性院檀信徒の皆様方におかれましては、令和4年の新しい年をご家族ご一同様でご無事にお迎えのことと、心よりお慶び申し上げます。また、旧年中に賜りましたご厚情に対しまして、心よりお礼を申し上げます。本年も、當山護持・発展の為一生懸命尽力して参りますので、ご信援を頂きます様、よろしくお願い致します。

    さて、約2年に亘り、世界中に不安や恐怖をもたらした新型コロナウイルス感染症ですが、我が国に於いては、専門家等が語る様々な要因のお陰なのか、幸いに新規感染者数も少ない状態を維持できております。人々が社会生活を再開する中、今後増減の波はあるかと思いますが、ワクチンに加え、治療法や経口薬の開発が進めば、病気を抑え、社会的不安も和らぎ、コロナ以前の日常を取り戻せる、そんな希望がやっと見えて来たように感じます。

    昔から、「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」と言われますが、人生は必ず楽も苦も伴います。どちらか一方ということはありません。しかし、私たちは幸せのみを願い、苦しいことがあれば、この苦しみが永遠に続くものだと思い込んでしまいがちです。もし、幸せのみの世界だとしたら、私たちはその世界を幸せと感じることが出来るでしょうか?新型コロナウイルス感染症の流行前、私たちは友人と食事に出かけたり、遊びに出かけたり、旅行をしたり、そのすべてが“当たり前”と思っていました。当たり前なのですから、当然そこに感動や有難さを感じる心は生まれにくいでしょう。

    ところが、コロナ禍で私たちの思っていた“当たり前”はいとも簡単に崩れ去りました。従来、私たちが過ごしていた日常は、“当たり前”ではなく“有難い”ものだと気づかされたのです。これは、“コロナ禍”という苦が、今までの日常生活がいかに有難いものかということを私たちに教えてくれたのだと思います。

    幸せのみの世界にいたら決して気づくことの出来なかった幸せ。幸せな人とは、当たり前と思って見過ごしているものの中にある、本当の幸せを受け止める感受性を備えた人なのだと思います。

    間もなく、コロナ禍という長かった苦しみから脱して、元の日常である“楽の世界”に戻れるかもしれません。しかしそれは、コロナ禍という苦しみを経た上で獲得できる“楽の世界”でもあります。苦しみとは、普段私たちが気づかない有難い“楽”を教えてくれるもの。このことを心に刻み、コロナ後は多くの幸せを感受できる心を養いたいものです。

    令和4年が、檀信徒皆様にとって幸多き年となります様、ご祈念申し上げご挨拶と致します。

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  • 正月号2021.01.01

    龍性院檀信徒の皆様方におかれましては、令和3年の新しい年をご家族ご一同様でご無事にお迎えのことと、心よりお慶び申し上げます。また、昨年中に皆様方に賜りましたご厚情に対しまして、心よりお礼を申し上げます。本年も、當山護持・発展の為一生懸命尽力して参りますので、ご信援を頂きます様、よろしくお願い致します。

    昨年を一言で振り返ると“コロナ禍”での一年間であったと、どなたに聞いても仰られるのではないでしょうか?ニューノーマルとか新しい生活様式という言葉のもと、文字通り私たちの生活は一変し、私などはまだまだその新たな環境に慣れないところもございますが、もう新たな環境にすっかり順応されている方も一方ではいっらしゃると思います。

    国があれだけ「働き方改革」とスローガンを掲げ、多様な働き方を選択する社会の実現を目指していながら中々前進できなかったのに、コロナ禍になりその改革が一気に前進したのは皮肉なことであります。

    さて令和2年の『2020 ユーキャン新語・流行語大賞』の年間大賞に「3密」が選ばれました。この「3密」とは、もう皆様良くご存知の“密閉”“密集”“密接”を指す言葉です。新型コロナウイルス感染症対策として、厚生労働省や総理官邸が打ち出した標語としてもすっかり有名になりました。

    実はこの「3密」と全く同じ『三密』という用語が仏教(密教)にあります。三密とは、“身密(手に印を結び)”“口密(口で真言を唱え)”“意密(心に仏さまを感じる)”のことで、この『三密』を実践すると、私たちは“この身このまま”仏さまになることができると弘法大師は説いていらっしゃいます。

    こう聞くと少し難しいと思われるかもしれませんが、この『三密』を現代社会に応じて考えるなら、“身密(自分の行いを正す)”“口密(自分の言動を正す)”“意密(自分の心を正す)”を実践しようということです。かなり分かりやすくなりませんか?

    自分勝手な行動は慎んで、大切なものを見極め守るために行動すること。

    他人を傷つける言動を控え、積極的に人に感謝の気持ちを伝えること。

    人を思いやり周囲に惑わされず、ありのままの自分の心を見つめること。

    「3密」を避け『三密』を実践することは、大切な人を守り、社会を安定させ、ひいては自分の人生を豊かにすることに繋がるものだと思います。

    コロナ禍の今だからこそ、二つの《さんみつ》を是非心に留めていきたいですね。

    令和3年が、檀信徒皆様にとって幸多き年となります様、ご祈念申し上げご挨拶と致します。

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  • 正月号2020.01.01

    新元号〝令和〟となってから初めてのお正月を迎えました。龍性院檀信徒の皆様方におかれましては、旧年中に賜りましたご厚情に対しまして、心よりお礼を申し上げます。本年も、當山護持・発展の為一生懸命尽力して参りますので、ご信援をいただきます様、よろしくお願い致します。

    気象庁の3か月予報によれば、この冬(12月~2月)は全国的に暖冬傾向になると発表されています。しかし、暖冬といっても毎日が暖かいという訳ではなく、あくまで平均すると気温が高めという事であり、日によっては冬らしく冷え込む時も当然あります。寒暖の差が生じる機会も増えることが予想をされますので、皆様どうぞご自愛頂きたいと思います。

    さて、この秋も全国的に比較的高温傾向であった様で、各地で紅葉の時期が平年に比べ遅れているとの報道を頻繁に目に致しました。12月も10日を過ぎると、さすがに落葉樹はほぼその葉を落とし終わりましたが、平年より遅いという報道は私の目から見ても確かなものであったと思います。

    この紅葉ですが、全国各地で見頃の時期が違っているのは皆様もご存知の通りです。紅葉前線に従って北から南に紅葉は進行します。樹の種類は同じでも、紅葉の時期は日本の北部地域と南西部で、場所によっては2か月以上も違いが現れるのです。

    〝因縁〟という仏教用語があります。「因」とは物事の起こる直接的原因、「縁」とは間接的要因であり、世の中のすべての物事はこの2つの働きによって生じます。樹木が紅葉するのも、紅葉する樹木が存在するという「因」と、紅葉する為の一定の環境である「縁」が揃い初めて美しく紅葉するのです。紅葉の時期の違いは「縁」の違いがそうさせているのでしょう。

    私たちの人生に置き換えて考えてみます。「因」とは自分自身の行いの事であり、「縁」はそれ以外の要因の事を言います。私たちは人生で良い結果が出た時は「因」の〝お陰〟と考え、悪い結果が出た時は「縁」の〝せい〟と考えがちです。しかし、世の中のすべての物事は2つの働きによって生じるのですから、良い結果が出る時は「因」だけでなく「縁」のお陰でもありますし、逆に悪い結果が出た時は「縁」だけではなく「因」のせいとも言えるのです。

    そこで、私たちが良い結果を生み出す為に真っ先にできることは、良い「因」を生み出す事です。「因」は自分自身の行いなのですから、自らが心がければ今この瞬間から実践する事は可能です。そして、良い「因」を作り出しておけば、周囲の環境である「縁」が整った時、初めて素晴らしい成果を生み出す事ができるのです。いくら周囲の環境の「縁」が整っていても、自身の「因」が整っていなければ、成果は上がりません。秋が深まっても、肝心の樹がなければ紅葉は見られないのです。

    令和2年が、檀信徒皆様にとって幸多き年となります様、ご祈念申し上げご挨拶と致します。

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